8か月の交渉で年1000万円の賃料を得られる物件を共有取得した事例
事案の内容
相談者のお母様が亡くなり、もう一人の相続人である長男と遺産分割協議の話合いをすることになりました。お母様の遺産としては、自宅不動産、年間賃料約1000万円の貸地、預貯金があり、相談者は年間賃料約1000万円の貸地の取得を希望していました。
また、長男がお母様の財産管理をしていたこともあり、お母様の預貯金から多額の金銭を引出していたようでした。そこで、相談者が長男に対し、使い込んだ金銭の使途を問いただしましたが回答を得られず、約9か月もの間、遺産分割の話合いが進まない状況に陥っていました。
当事務所の活動内容
当事務所は、遺産分割の進め方に不安に思っている相談者に対し、今後行うであろう手続について丁寧に説明することを心がけました。
そしてまずは、遺産を整理し、法定相続分に従って分割した場合どの程度財産を取得することが見込まれるか整理するところから始めました。
次に、使い込んだ金銭の追及をしましたが、漠然と「何に使ったのか?」と長男に聞くのではなく、エクセル表を利用し、目に見える形で分かりやすく整理した上で、長男に使途を確認していきました。
そして、長男からの回答も踏まえ、当方で作成した資料に基づいて、分割方法を提案していきました。
結果
約8か月間の交渉の結果、当方で整理した遺産目録を前提に解決することができました。
具体的な分割方法ですが、長男は母の自宅不動産に居住していくことを希望したため、同不動産を取得する代わりに相談者に代償金を支払ってもらうことになりました。代償金の算定にあたっては、当方で取得した不動産業者の査定書を前提としたほか、長男の不正出金の一部を上乗せすることができました。
問題の貸地については、長男との共有で取得することを選択しました。一般的に、不動産においては、対立する者同士の共有は望ましくないとされています。しかし、本件のように貸地の場合には、建物のように定期的な修繕を予定せず、当事者間で工事の段取り等で揉めることはほとんどありませんし、地代の管理についても管理会社を入れることで毎月の地代の受領・分配を円滑に行うことができます。
なにより、相談者の今後の生活の基盤を維持していくためには、貸地の収益を手放すことができなかったという事情もあり、本件では長男との共有での解決を選択することになりました。
処理のポイント
遺産分割においては、待ちの姿勢ではなかなか解決をすることができないことが多いです。当事務所では、議論のたたき台となる遺産目録、使途不明金目録などを積極的に作成することで、案件の問題点を整理し全体像を把握するように努めます。その上でご依頼者の意向を踏まえて様々な選択肢を提供の上、何がベストかを一緒に考え、相手方に提案するようにしています。
本件では賃料年1000万円の不動産の分割方法が特に重要なポイントでしたが、総合的な観点から不動産を共有とすることで、お客様に満足していただける解決ができました。