文書提出命令により相手方の預金を開示させ、約1500万円の勝訴判決を得た事例
事案の内容
数人の兄弟姉妹の1人が、生前に管理していた親(被相続人)の預貯金から多額の金銭を引き出してしまったという事案です。相談者は預金の取り戻しを請求したいと考え、ご自身で家事調停の申立をしましたが、預貯金を引き出した相続人はきちんと説明しようとせず、裁判所からは調停の取り下げを促されてしまいました。
当事務所の活動内容
当事務所が代理人となり引き出した金銭の返還を求める民事訴訟を提起しました。訴訟の中で、問題の相続人は引き出しへの関与を否定したため、預金払戻請求書の署名の筆跡鑑定を実施し、被相続人の筆跡でないことが判明しました。その後、相手方は払戻請求書に署名したことは認めましたが、金銭は全て被相続人に渡しており、相手方は全く受け取っていないと主張しました。
そこで、被告の預金取引について文書提出命令の申し立てを裁判所に行い、これが認められて被告の預金取引を開示させることができました。その結果、相手方の預金口座に被相続人の金銭が入金されていることがわかり、相手方の説明が間違っていることが判明しました。
結果
最終的に約1500万円の勝訴判決を勝ち取ることができました。
処理のポイント
生前に被相続人の預貯金を管理していた人が、勝手に金銭を引き出してしまうということあよくあります。この種の事案で勝訴するには、証拠の収集が極めて重要です。
金融機関から取引明細や署名筆跡のある払戻請求書を取り寄せ、取引の状況、及び、払戻に関与した人物を明らかにします。そして、出金当時の被相続人の心身の状況を調査するため医療機関や介護施設から診療録や介護記録などを取得します。
相手方が金銭を受け取っていることの立証責任は金銭の返還を請求する原告側にあるため、丁寧な調査と証拠収集、及び、法律に則った的確な主張が必要になります。
一般に相手方の預金取引を開示させることは困難ですが、本件は訴訟手続における文書提出命令という特殊な方法を利用することで、相手方の預金口座の強制開示に成功した珍しい事案です。