会社経営者の相続事件 会社を経営していた夫が突然亡くなった事例
事案の内容
会社経営者が突然亡くなり、奥様から相談を受けた事案です。奥様は会社の経営に全く関与しておらず、会社のことは何も分からない状態だったので、突然の社長の死に直面して困惑なさっていました。
奥様が会社の経営を引き継ぐことは難しかったので、社員の1人があたらしい社長となり会社を経営していくことになりましたが、奥様の今後の生活を考える必要がありました。
また亡くなった社長が約7000万円の会社の借金の連帯保証(一部は奥様も連帯保証)をしていたため、社長交代後に万が一会社の経営状況が悪化すると、奥様が連帯保証人として支払いを求められる可能性がありました。
当事務所の活動内容
当事務所は、奥様の代理人として、社長交代後の会社と交渉をしました。
当事務所は、会社の決算書などから財務状況を丹念に調査し、会社にとって無理がなく、かつ、亡くなった社長の功績に相当する妥当な金額が奥様に支払われるように解決案を提案し、交渉しました。
また同時に金融機関や会社と協議をし、連帯保証の解除に向けて尽力しました。
さらに、本件では亡くなった社長と奥様の間に子供がいたため、連帯保証の解除がうまく行かない場合に備えて子供には相続放棄の手続を行ってもらい、相続人を奥様に集中させたうえで交渉を進めました。最悪の事態となっても、お子さんが保証債務を負ってしまうことのないようにとの配慮からです。
案件の処理を進める仮定では当事務所と提携している税理士と協議をし、相続税や所得税等の課税が生じることがないように配慮しました。
結果
交渉が順調に進み、委任契約から約4か月で解決できました。
お客様は死亡退職金として1200万円を超える金銭の支払いを受け、また、約7000万円の連帯保証の完全な解除に成功しました。
お客様は、自宅と金融資産を相続すると共に退職金を受領でき、また、連帯保証債務から解放されたことで安心して生活できるようになったと喜んで下さいました。
会社の代表取締役が突然亡くなった場合の特殊性
会社を経営していた社長が病気や事故で突然亡くなってしまうと、ご遺族は大変混乱した状況に置かれます。特にご遺族が会社の経営に関与していなかった場合、会社の状況がわからないにもかかわらず、次のように決めなければならないことがたくさんあります。
①事業を継続するのか
②継続するとした場合、次の代表取締役を誰にするのか
③亡くなった社長の退職金をどのように決めるのか
④亡くなった社長が負担していた連帯保証債務をそのまま相続してもよいのか
⑤そもそも単純に相続してもよいのか、相続を放棄するべきなのか、それとも限定承認をするべきなのか
⑥株式はどのように扱えばよいのか
相続放棄や限定承認は相続開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申述を行う必要があるので、迅速に行動して判断をしなければ間に合わなくなることがあります。
また、4か月以内にしなければならない準確定申告と10か月以内にしなければならない相続税の申告が必要となることが多く、その対応に追われる一方で、会社側の人間(他の役員や従業員)と協議をして、上記①から⑥のような事項を決めていかなければなりません。
社長のご遺族は、会社のこと、税金のこと、そして法律のことについて知識が不十分な場合が多いので、会社の顧問税理士及び会社側の人間に言われるとおりに、各種の書類への押印などをしているケースが目立ちます。しかしそれで本当に家族の権利や安全は守られるのでしょうか?
会社の顧問税理士は顧客である会社側の利益に沿って活動することがあるので、言われるとおりにすることで、(会社の経営にとってプラスになる場合があっても)ご遺族にとって不利益になることや、最悪の場合、ご遺族が返済しきれない巨額の負債を抱えてしまうこともあり得るのです。
そのため、ご遺族は早い段階で弁護士に相談して、各種書面に署名・押印をする前に、ご遺族の立場にたったアドバイスをしてもらう必要があります。本件でも、早めに相談にいらして下さったことが、うまく解決できたことの要因です。
当事務所は会社法に関連する案件(株式譲渡、会社の内部抗争に関する案件、株式の相続に関する案件など)を多数受任しているので、非上場株式が絡む相続問題を得意としています。まずはご相談いただけると幸いです。