遺産分割 通行地役権、境界確定、死因贈与など様々な制度を利用して解決した事例
事案の内容
父親が亡くなり、法定相続人は母親と3人の子供達という事案で、子供の1人から相談を受けました。
遺産には複数の土地があり時価総額は数億円でした。遺産の中には各相続人が自宅として利用している土地があるほか、広大な実家の土地と、月数十万円の賃料収入が得られるアパートがありました。
お客様はアパートの取得を希望していましたが、やはりアパートの取得を希望する他の相続人と折り合いが付かず、遺産分割調停の申立をされてしまいました。
また土地が広いため、遺産分割をするためには、分筆登記が必要でしたが、実家の土地の境界について隣地と争いがあり、その境界がどこに決まるかによって土地を分筆する位置が変わってくるという難しい事案でした。
当事務所の活動内容
当事務所は、遺産分割調停の中で多数の主張書面及び証拠を提出するとともに、率先して分割案を考えて提案しました。分割案について相手の要望が出されると、お客様と相談のうえ修正し、再提案をするという作業を繰り返しました。
特別受益、寄与分の主張も出ていたため、調停の進行は混沌としそうでしたが、双方の主張を整理するとともに、土地の分筆案をくり返し修正して提案し、相手を説得していきました。
本件では、隣地との境界を確定しないと土地の分筆位置を決められないという難しい問題があったので、調停成立後に筆界特定の申請及び境界確定訴訟の提起し、その結果に連動して土地の分筆位置が自動的に決まるような内容の調停条項を提案しました。
また、分筆後の土地の一部に通行地役権を設定しなければ、その後の土地の使用に支障が生じる箇所があったので、調停条項により通行地役権定を設定する提案もしました。
結果
当方が提案した調停条項案の内容に沿って調停を成立させることができ、お客様が最終的にアパート全てを取得できることになりました。
そして、調停成立後の筆界特定の申請及びそれに続く境界確定訴訟により、当方が希望する形で境界を確定することができたので、その後、確定した境界に従って土地の分筆登記をし、調停条項通りに土地を分けることができました。
なお、アパートについてはお客様と母親が共有する形にしましたが、調停条項の中で、撤回が不可能な形で死因贈与契約を締結したため、母親が亡くなったときには、母親の持分が必ずお客様に相続されるようにしました。
処理のポイント
本件では、調停条項の中に、①筆界特定の申請及び境界確定訴訟、②通行地役権の設定、③死因贈与契約という複数の制度を盛り込んだ珍しいケースです。
通常、家庭裁判所で遺産分割調停が成立した場合に作成される調停条項は、本文についてA4用紙で1~2枚程度です。しかし本件では本文だけでA4用紙10枚に及び、添付図面など全て含めると調停調書は20ページになりました。
本件は幅広い不動産に関する知識が要求される事案でした。遺産分割の対象に不動産が含まれることが多いため、遺産分割協議にあたっては不動産に関する専門的知識が欠かせません。不動産に関する紛争を数多く扱ってきた当事務所ならではのノウハウをいかすことができた事例でした。