遺留分減殺請求 不動産を共有名義にしたうたうえで共同売却した事例
事案の内容
法定相続人2人のうち1人に全財産を相続させるという内容の遺言があったケースで、もう1人の法定相続人から遺留分(4分の1)について相談を受けました。遺産として不動産があることははっきりしていましたが、預貯金などの金融資産の状況はわかりませんでした。ご相談者は、遺留分権利者としての正当な権利を確保することを希望していました。
当事務所の活動内容
当事務所は、お客様を代理して、遺言で財産を取得した相続人に対し、遺留分減殺請求通知を送付するとともに、金融資産の開示を要求しました。
その結果、金融資産について通帳などが開示されたましたが、全ての金融資産が開示されたのか分かりません。また、亡くなる直前に多額の預貯金の引出がなされていることも考えられます。
そこで、当事務所から各金融機関に照会して、預金取引の明細を取り寄せ、金融資産の調査を行いました。そのうえで、明確になった遺産を前提に、全財産を取得した相続人と解決に向けて交渉をすすめました。
結果
交渉の結果、不動産については、一旦持分4分の1について移転登記をしてもらい共有としたうえで、相続人同士が協力して不動産を売却することになりました。弁護士が間に入って不動産業者に依頼して売却の段取りをしたので、相続人同士が直接連絡をする必要がなく、スムーズに不動産の売却をすることができました。そして、売買代金から諸費用を差し引いた残りの4分の1を受け取ることができました。
また預貯金についても4分の1以上の支払いを受けることができました。
調停や訴訟手続をせずに、交渉だけで満足な結果を得ることができました。
処理のポイント
相続人の1人が財産を管理している場合、他の相続人は、遺産としてどのような預貯金や投資商品があるのかはっきりとしないことが多いです。財産について資料の開示を求めても、資料を出さなかったり一部しか資料を出してこない場合があります。
このような場合、相続人の資格で金融機関に残高や過去の取引履歴を照会をすることができます。当事務所では、不慣れなお客様に代わって、金融機関への代理照会を行っています。
また、遺留分減殺請求をする場合、遺留分を金銭で支払ってもらうことを希望する方が多いのですが、法律上は金銭で支払うことを強制することはできず、不動産については共有持分の移転を請求することができるだけです。遺留分の請求をされた相続人が金銭を支払って解決することを希望するのであれば、金銭で解決することができるのですが、本件では、遺言で財産を相続した相続人には金銭を支払う資力がありませんでした。
そこで、不動産を一旦共有にし、共同で売却することにしたのです。不動産を共有にしておかないと、遺言で財産を取得した相続人が、知らないうちに不動産を売却して代金を隠してしまうこともあり得ます。そのため、共有の状態にしたうえで、共同で売却し、売却の時に確実に代金を受け取るのが安全です。
なお、万が一、共有にしたあとに、売却の方法で意見が一致しなかったり、一方が売却に非協力的になり、売却が進まなくなってしまった場合、共有物分割訴訟を提起することで、不動産を強制的に売却することができます。