事業を継いだ兄弟に銀行融資を利用してもらい代償金5500万円を取得した事例
当事務所に依頼する前の状況
お客様の父親が亡くなり、相続人はお客様と兄弟2人(相手方)の3人でした。兄弟の1人は、お父様から家業である法人を承継しており、その法人は遺産に属する土地建物を本社としていました。また、相手方は遺産に属するを土地や建物を住居として利用していました。
結婚して家を出ていたお客様は、金銭の取得を希望していましたが、不動産以外にどのような遺産があるのか詳細が分からず困っていました。お客様は相手方に遺産の開示を求めていましたが、相手方から遺産の開示がなく、遺産分割を進める方法が分からずに当事務所に相談にいらっしゃいました。
当事務所に依頼した結果
遺産分割調停の結果、5500万円を取得できました。
当事務所の活動内容
ご依頼を受けた後、まず相手方に財産の開示を要求しました。また、相続税の申告が必要なケースだったので財産開示要求と同時に、相続税申告を共同で行うことを提案しました。その結果、財産の開示を受けられただけでなく、相続税の申告も共同で行うことができました(相続税申告までに遺産分割協議が成立する見込みのない事案だったので、相続税の申告は遺産未分割という前提で行い、遺産分割完了後、再度税金の計算をして過不足を精算することになりました)。
遺産の内容ははっきりしたものの、遺産の大部分は不動産で、現預金が少なかったので、お客様が取得すべき代償金を相手方が用意することができず、交渉が進む見込みがありませんでした。
そのため、当事務所が代理をして遺産分割調停の申立をし、調停手続の中で、当方の希望する代償金の計算根拠を書面で主張したうえで、相手との間で代償金の額を協議するとともに、代償金の支払い方法を協議しました。
相手方は代償金を直ちに用意することができなかったので、相手が承継した法人のメインバンクから法人が融資を受け、その借入金で代償金5500万円を支払ってもらうことができました。
処理のポイント
遺産の内容がはっきりとしないものの相続税の申告が必要になるケースでは、遺産を管理している相続人と共同で相続税の申告をすることを検討します。相続税の進行を共同で行うことができれば、遺産に関する情報や資料を共有することができるからです。しかし、この場合、多くのケースで、相手の顧問税理士など相手の味方である税理士に依頼することになり、不安を感じる方がいます。しかし、相続税申告書の計算方法からして、ほとんどのケースにおいて、税理士が特定の相続人に有利なかたよった申告書を作成することはできないので、相手の味方であったとしても、原則としてその税理士に依頼するべきです。どうしても不安を感じる場合には、申告書を提出する前に、当方で別に税理士を頼んで、チェックしてもらうとことができます。
本件では、遺産の全体像は相続税の申告を共同することで明確になりましたが、遺産の大部分が不動産であり、しかも不動産の使用状況や抵当権設定状況から売却が難しい状況でした。そこで、相手が父親から承継した会社にメインバンクから借り入れをしてもらい、これにより代償金の支払いを受けることができました。
なお、相手の借り入れで代償金を支払ってもらう場合、遺産分割協議成立後に、確実に相手が約束通り融資の申込みをして代償金を支払ってもらえるのか不安が残ります。相手と約束をしていても相手が100%守るという保証はなく、仮に相手が約束を破ったとしても刑事処罰などの厳格なペナルティを科すことができないからです。
そこで、本件では融資銀行において、融資実行日の当日に遺産分割協議書の取り交わしを行うことで、①融資の実行、②代償金の送金、③遺産分割協議書の取り交わしを同時に行いました。この方法であれば、遺産分割協議の成立と同時に代償金を受け取ることができるので、上記のような不履行の不安を払拭できます。