不動産はどのように評価するのですか?
ほとんどの場合、遺産の分割方法を定めるためには不動産の評価額を確定する必要があります。
遺産分割の際の評価額は、固定資産評価額や相続税評価額といった明確な基準がないため、しばしば当事者の間で、不動産の価値をめぐって争いが起こります(遺産分割の際の評価額が固定資産税評価額や相続税評価額によって決まるものだと考えている方もいらっしゃいますが誤解です)。
評価する時点については、遺産分割のための評価であれば遺産分割の時というのが実務の考え方ですが、評価時と遺産分割時を全く同時にすることは現実的にできないので、遺産分割時にできる限り近い時期の評価額を用いることになります。なお、遺留分算定のための評価の場合には相続開始時で評価します。
不動産の評価額をめぐって争いになった場合、不動産鑑定士に鑑定を依頼することが考えられます。
しかし鑑定士によって不動産の評価額が異なることがあるため、ある当事者から依頼された不動産鑑定士の評価額では、他の当事者が納得しません。
そこで遺産分割調停などの裁判所における手続において、裁判所が選任する中立な不動産鑑定士に、鑑定評価を依頼することになります(家事事件手続法64条1項、258条1項、民事訴訟法212条)。
しかし鑑定費用は当事者が予納しなければならず、費用も安くはありません。そのため実際の遺産分割手続においては、鑑定士を利用せずに相続税評価額、公示価格などをもとに話し合いで評価を確定していくことが多々あります。
なお、相続税評価額は時価の80%、固定資産税評価額は時価の70%というのが大まかな目安といわれます。