横浜で相続(遺産分割・遺留分)に強い弁護士をお探しの方は、伴法律事務所にご相談ください。桜木町駅4分、馬車道駅4分

横浜の弁護士による 遺産分割・相続トラブル相談

対面・オンライン初回相談 60分無料

電話受付:平日9時~19時 メール24時間 相談実施:平日10時~最終20時スタート

LINEでの
お問い合わせ

遺産に居住(占有)する相続人への賃料請求

 

遺産に居住(占有)する相続人への賃料請求

(2024年6月記事)

1 はじめに

 相続開始(死亡時)前から遺産である不動産に居住していた相続人が、相続開始後も引き続き不動産を使用していることがあります。
 また、相続開始時には住んでいなかったのに、相続開始後に相続人の1人が勝手に遺産である不動産に住み始めてしまうということがあります。
 相続開始によって遺産は相続人の共有の状態になるため(民法898条)、相続人の1人が、遺産を独占的に使用する場合、他の相続人は賃料を請求することができるのでしょうか。

2 相続開始前から居住している場合(被相続人が居住を同意している場合)

(1) 被相続人と同居の場合

 相続開始前から被相続人と遺産である建物に同居している相続人がいる場合、遺産分割が完了するまでは、そのまま居住し続けても、原則として賃料を支払う必要はありません
 なぜなら、相続人が、被相続人の生前から、被相続人の承諾を得て、遺産に同居している場合、契約書はなくても、法律上は被相続人を貸主、相続人を借主とする使用貸借契約が存在するものと考えられるからです。
 使用貸借契約とは貸主(この場合は被相続人)が借主(この場合は同居する相続人)に無償で財産を使用させる契約です。そして、同居の場合、この使用貸借契約は、原則として、被相続人の死亡によって終了せず、遺産分割が完了するまで存続すると解釈されているので、同居している相続人は、使用貸借契約に基づいて無償で建物への居住を続けることができると解釈されるからです。
 最高裁判所平成8年12月17日判決は、「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。」と判示しています。
 つまり最高裁判所は、ある相続人が被相続人と同居していた場合、被相続人の死亡後も、遺産分割が完了して最終的な取得者が決まるまでの当面の間は、その相続人が無償で居住し続けてもよいと考えていたと推定されることから、特別な事情がない限り、使用貸借が継続すると述べています。
 ただ、最高裁判所は、特段の事情があれば、使用貸借契約は存続しないということも述べています。したがって、特段の事情がある場合には、使用貸借は認められず、居住する相続人は自己の持分を超えて使用の対価を支払う義務があります(民法249条2項)
 たとえば、被相続人と同居していた相続人の間で、被相続人が死亡した場合に退去するという合意があった場合には、使用貸借が存続しないという特段の事情が認められます。
 なお、同居する相続人が配偶者の場合には、後ほど説明する配偶者短期居住権の制度があります。

(2) 別居の場合

 同居ではなく、被相続人とは別に遺産である建物に居住していた場合はどうでしょうか。
 この場合については最高裁判所の判決がないため統一的な解釈がありません。相続人が居住を始めた経緯、被相続人が同居を許した理由、相続人と被相続人の関係などが考慮されて、使用貸借が相続開始後も継続するのか、事案ごとに判断されることになると思われます
 東京地裁令和2年10月23日判決は、被相続人との同居でなく別居していたケースで、遺産分割審判の確定時まで、被相続人と相続人の遺産の建物についての使用貸借契約が継続すると判断しています。

3 相続開始後に居住を始めた場合

 被相続人の死亡後に勝手に遺産である不動産に住みついてしまった場合には、他の相続人は、居住する相続人に対し、その持分を超えて使用している分についての対価(賃料のようなもの)を請求することができます(民法249条2項)
 ただし、対価は請求できるものの、ただちに建物から退去することを命じることはできません。相続人の1人として共有持分を持っている以上、共有持分に基づいて建物全体を使用する権利があるからです(民法249条1項)
 しかし共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格の過半数で決することになっています(民法252条1項)。そのため、過半数の相続分を持つ相続人が、現在居住している相続人とは別の者に建物を使用させると決定した場合には、明渡を求めることができます(金融財政事情研究会令「Q&A 和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法」64頁)。

4 配偶者短期居住権

 配偶者が被相続人死亡時に遺産に居住している場合、配偶者短期居住権という制度があります。
 配偶者短期居住権は、夫婦の一方が死亡後に、生存している妻または夫が、一定の期間、居住建物を無償で使用することができる権利です(民法1037条)。この権利が認められるためには、相続開始時に、配偶者が既に居住していなければなりません。相続開始後に居住を始めた場合には認められません。
 配偶者短期居住権には2つの種類があります。

(1)1号配偶者短期居住権…配偶者が居住建物の相続権を持つ場合

 居住建物について配偶者を含めた共同相続人間で遺産分割をする場合に、次のいずれか遅い日までの間、配偶者は無償で建物に居住することができます。
   ①居住建物について遺産分割が完了した日
   ②相続開始日から6か月を経過する日

(2)2号配偶者短期居住権…配偶者が居住建物の相続権を持たない場合(相続放棄、遺言で他の相続人が建物承継の場合など)

 居住建物について配偶者が相続権を持たない場合に、居住建物の所有権を取得した者が配偶者短期居住権の消滅の申入をしたときから6か月を経過する日までは、配偶者は無償で建物に居住することができます。

 なお、配偶者短期居住権と配偶者居住権は別のものなので、注意が必要です。配偶者居住権についてはこちらをご覧ください。

解決事例検索

相続・遺産分割に関するご相談は
初回60分無料です。

まずはお気軽にお問合せください。

電話受付:平日9時~19時 メール24時間 相談実施:平日10時~最終20時スタート

伴法律事務所 桜木町駅4分、馬車道駅4分

この記事の執筆者

弁護士 伴 広樹

経歴

神奈川県厚木市出身。1997年司法試験合格後、2000年に司法修習を修了(52期)し、弁護士登録。横浜市内の法律事務所に勤務後、2004年に伴法律事務所を開設。年間280件の相続の法律相談に対応している。
弁護士業務では①お客様の期待に沿う徹底した調査,②お客様が納得できる提案力,③お客様が安心して任せられる確実かつ迅速な処理の3つを心がけており、実際に業務に対しての評価も高い。

活動・公務など

・神奈川大学非常勤講師(2009年9月~2016年3月)
・明治大学リバティアカデミー(市民講座)講師(2015年~2016年)
・横浜弁護士会(現神奈川県弁護士会)常議員(2009年4月~2010年3月)
・一般社団法人神奈川健康生きがいづくりアドバイザー協議会神奈川健生成年後見センター運営委員会委員(2015年8月~)
・セミナー講師としての活動 川崎市役所,東京地方税理士会保土ヶ谷支部,神奈川県宅地建物取引業協会横浜中央支部,神奈川青年司法書士協議会など各種団体におけるセミナー講師を担当

60分
初回相談
無 料

お気軽にお電話ください

電話受付:平日9時~19時 メール24時間 相談実施:平日10時~最終20時スタート

相続の相談予約フォーム

LINEでのお問い合わせ

ホーム

メール

LINE

電話での相談予約タップで電話がかかります