不動産(土地建物)の相続問題を抱えている方
目次
このようなお悩みはありませんか?
1 不動産を他の相続人と共同で売却して代金を分配したい。
2 共同住宅(マンション、アパート等)が遺産に含まれていて、是非とも取得したい。
3 賃料収入がある土地や建物があるので、賃料の分配を受けたい。
4 遺産の中に市街化調整区域が含まれ、高すぎる(又は安すぎる)評価での分割を提案されている。
5 自宅不動産を取得したいけれど、多額の代償金を払いきれない。
6 不動産ではなく代償金を取得したいが、実家の跡取りとなった長男が代償金を払うだけの金銭を持っていない。
7 遺産の土地の境界が不明確で、遺産分割の進め方が分からない。
8 関係者に争いがある場合でも、不動産の売却を安心して依頼できる業者を紹介してほしい。
不動産(土地建物)が遺産に含まれる相続事件は、不動産に関する幅広い知識と特有のノウハウが必要です。
不動産が関係する相続では、①不動産をどのように評価するのか、②土地をどのように分割(分筆)するのか、③どのように登記手続(相続登記、表示登記、分筆登記等)を行うのか、④取得する土地に建物を建築することができるか、⑤不動産の売却をどのような手順で行うべきか、⑥金銭を回収するため不動産にどのように担保権(抵当権)を設定するか、⑦借地権をどのように処理するか、⑧どのように税務処理(税務申告など)を行うのか、などが問題となることが多く、その処理のために不動産に関する専門的知識と経験が要求されるからです。
以下に、不動産の相続でよく問題となる点について、詳しく説明していきます。
1 不動産の評価方法
(1) 不動産は実勢価格で評価する
不動産の相続において、遺産分割をする場面においても、遺留分侵害額請求をする場面においても、不動産をどのように評価するのかが問題となります。
結論からいうと、遺産分割、遺留分の場面において用いられる不動産の評価方法は実勢価格です。
法律に詳しくない方の中には、固定資産税評価額や相続税評価額(路線価による評価)を基準として遺産分割をするものだと誤解をしている方がいますが、これらは当事者が合意しない限り基準になりません。固定資産税評価額は固定資産税の税額を定めるための基準に過ぎず、相続税評価額は相続税の税額を定める基準に過ぎず、実勢価格とは異なるものだからです。
しかし、実勢価格は、どこかに記載されているものではありません。そのため、実勢価格がいくらなのかを巡って、対立が生じることが多くあります。
(2) 実勢価格はどのようにして決まるのか?
不動産の評価を当事者が合意することができれば、これを基準に遺産分割や遺留侵害額を定めることができます。
しかし、合意ができない場合、最終的には不動産鑑定士の鑑定によって、評価額が定まります。しかも、不動産鑑定士は、裁判所の調停手続や訴訟手続において、中立な裁判所が選任した不動産鑑定士でなければ信用されません。一方の当事者が私的に不動産鑑定士に依頼して作成された不動産鑑定書は、裁判手続ではあまり信用されないのです。
しかし、多くの案件においては不動産鑑定まで行うことなく、話し合いで不動産の評価額が定められています。どのように合意をするのでしょうか?
当事務所がよく行う交渉方法は、当事務所が提携している不動産業者に査定を依頼し、実勢価格を算定してもらい、これを前提に遺産分割の計算書または遺留分侵害額計算書を作成します。そして、この計算書を査定書と共に相手方に提示して、全体的な解決案の打診をします。相手が納得すれば、遺産分割協議成立または遺留分侵害額請の合意ができ解決になります。もし、相手が当方の評価額を了承しない場合、相手の主張を聞きつつ相手と交渉を続け、相手がとこまで歩み寄ってきそうか交渉で解決できるギリギリの線を探っていくことになります。
2 代償金などの金銭を支払う場合
不動産の相続問題を解決する過程で、代償金、遺留分などの金銭を当事者間で支払うという解決方法がよく用いられます。
不動産の評価、特別受益、寄与分、生前に引き出された金銭の精算など、争点について議論を重ねた上で、支払う金銭の額が定めていきます。
金銭を支払って解決する場合、その金銭をどのように用意するのかが問題になります。手持ち資金があればよいのですが、それが用意できない場合、①不動産の一部を売却する、②ローンを組む、③分割払いをする、などの方法によって金銭を用意することになります。
★不動産を売却してもらい代償金を用意したケースはこちらをご覧ください。
★相続人の1人が経営を引き継いだ法人のメインバンクから借入をしてもらい代償金を用意してもったケースはこちらをご覧ください。
★遺産分割の代償金を支払いのための銀行借入をしてもらい代償金を用意してもらったケースはこちらをご覧下さい。
★抵当権を設定してもらい代償金を分割で全額回収したケースはこちらをご覧ください。
3 不動産を共同売却する場合
不動産を共同売却して、売買代金を分けるという遺産分割をする場合はよくあります。
また、遺留分侵害額請求の事案で、金銭を支払うことが難しい場合、遺言と異なる内容で遺産分割協議を行い、遺留分権利者に遺留分に相当する不動産の持分を取得させ、共同で不動産を売却して代金を分ける方法で解決することもあります。遺言が存在しても、相続人全員が承諾していれば、遺言と異なる遺産分割協議を成立させることができるので、遺留分侵害額請求事案の最終的な解決方法として遺産分割協議を成立させることがあるのです。
当事者の対立関係が深い場合、共有不動産を共同で売却することについて、不安に感じる方もいると思います。しかし、弁護士を間に入れて進めれば、共同売却もスムーズに進むことがほとんどです。
不動産を売却する場合、まず、不動産仲介業者に仲介を依頼して、売り出し価格を決めます。相続人間で、どの業者に依頼するべきか意見が分かれるときには、それぞれの相続人が希望する複数の不動産仲介業者に売却を依頼する方法があります。
不動産業者に売却を依頼する場合(媒介契約を締結する場合)、①専属専任媒介、②専任媒介、③一般媒介の3種類の契約があります。
一般媒介は、複数の不動産業者と媒介契約を締結できる契約です。売出し価格を協議して合意したら、各不動産業者に同時に売出しを依頼できます。そして、早く買主を見つけてきた不動産業者に売買契約の仲介を依頼することになります。
一般に不動産の売買は、
①契約締結→②買主の融資審査→③決済(代金の支払い所有権を移転する書類の引渡しを同時に行うこと)
という流れをたどります。
契約締結は契約書の持ち回りで行う方法もあり、一同に一同に会する必要がないことが多いです。③の決済の場面では、立会が必要になることが多いですが、持分に応じた代金の受領と、買主に所有権移転登記手続をするための書類の引渡しを同時に行うため、相手に裏切られてて分配金を払ってもらえないという心配がありません
弁護士が間に入って、不動産仲介業者や関係者とのやりとりをすれば、ほとんどの不動産売買は非常にスムーズかつ安全に行うことができます。
なお当事務所では、私的に入札を行い不動産を売却することがあります。これは、宅地分譲業者に広大な宅地を売却する場合など、購入を希望する業者が複数見込める場合に利用を検討する方法です。私的な入札を行う場合、あらかじめ売買の基本条件を定めたうえで、購入希望の業者に購入希望額を内々で申告してもらいます。そして、入札終了時に一番高額な売買代金を提示した業者と売買契約を締結するのです。複数の業者が競合して入札を行うため、通常に1対1の交渉をするよりも、高い金額で売却することが期待できます。
4 不動産を分筆して分ける場合
(1) 境界を確定することが必要
土地を分割して分ける場合、土地の分筆登記を行う必要があります。この場合、実測面積と公簿面積が違う場合(正確には、不動産登記規則第10条第4項にある精度区分である公差の範囲を超える違いがある場合)には、地積更正登記を行う必要があります。
地積更正登記とは、登記簿上の面積を実際の正しい面積に修正することです。地積更正登記をするために、土地を測量するだけでなく、隣地所有者との間で境界を確定しなければなりません。
境界に紛争がある場合、暫定的な合意をし、境界を確定するための手続(法務局が行う筆界特定の手続、裁判所が行う境界確定訴訟)を行ったうえで、最終的な分割をすることになります。
・境界確定訴訟を行ったうえで、遺産分割協議を完了させたケースはこちらをご覧下さい。
(2) 分筆後のそれぞれの土地の評価を決める
分筆登記はできる状況ではあるものの、分筆後の土地のそれぞれの評価を定めることは容易ではありません。土地の価値は面積だけでなく、道路にどのように面しているか、地形、有効利用面積など様々な要因から定まるからです。そのため、分筆して土地を分割する場合、分割後のそれぞれの土地について評価を定め、差額について金銭によって精算することが多いです。ときとして、分割後のそれぞれの土地の不動産鑑定評価が必要になる場合もあります。
(3) 登記手続の方法
共有土地を分割して分ける場合、まず分筆登記を行います。この時点では、分筆後のそれぞれの土地は、共有の状態のままです。その後、双方の持分を交換することで、土地の分割が完了します。
たとえば、ABの2名が共有する土地を分割して甲土地と乙土地の2筆の土地とし、甲土地をAが、乙土地をBが取得する場合の登記手続は次のようになります。
まず、土地の分筆登記します。この時点では甲土地も乙土地もAB2名の共有のままです。そして、甲土地のB持分をAに移転し、乙土地のAの持分をBに移転する登記を同時に行います。これにより甲土地はAが、乙土地はBが、単独で所有することになります。
5 借地権の相続
(1) 借地権の価値
借地権とは、建物を建てるために地代を支払って土地を借りる権利です。建物を所有する目的で土地の賃貸借契約を締結することで発生します。建物所有以外の目的の土地賃貸借契約の場合(駐車場、資材置場のための賃貸借契約など)や、無償で土地を借りている場合には借地権は発生しません。
借地権を発生させるための賃貸借契約は、契約書がなくても、建物を所有するために土地を使用しており、使用の対価として地代を支払っている実態があれば成立します。
借地権は借地借家法によって強く保護されており、地主が、賃貸借契約を解約したり、契約期間満了の際に契約更新を拒絶したりすることが厳しく制限されているので、借地にが希望すれば、多くの場合において半永久的に借地権を保持することができてしまいます。
また建物が老朽化しても、地主の承諾または承諾に変わる裁判所の許可を得れば、建物を建て替えることできます(契約条件によっては地主の承諾を得なくても建替が可能)。
そのため、借地権には財産的な価値があるものと考えられており、地主の承諾または承諾に変わる裁判所の許可を得れば、借地権を第三者に売却することもできるのです。
借地権がどの程度の価値があるかは、相続税計算における土地評価に利用される路線価図に記載されている借地権割合を利用するのが一般です。
路線価図には、路線ごとに借地権割合が記載されており、更地の評価額に借地権割合を掛けたものが借地権の評価になります。
なお借地権割合は地域、路線(道路)によって異なりますが、市街地では60%前後が多いです。
借地権の評価=更地価格の評価×借地権割合
したがって、建物が古くても、地代を支払っている場合には、借地権が存在しているため、建物自体に価値がなくても借地権に価値があるものとして、遺産分割や遺留分侵害額請求の対象になるのです。
(2) 借地権の分割方法
借地権を遺産分割で分ける方法として、相続人の1人が代償金を支払って単独で借地権を取得する方法があります(代償分割)。
次に、共同で借地権を売却して、代金を分配する方法があります(換価分割)。
借地権を売却する方法としては、次の3通りがあげられます。
①地主の承諾または承諾に変わる裁判所の許可を経て第三者に売却する方法
②地主に借地権を買い取ってもらう方法
③地主と共同で物件全てを第三者に売却し、代金を相続人らと地主で分け合い、相続人らに配分される代金を、さらに相続人で分ける方法
の3通りがあげられます。
6 相続税申告
(1) 基礎控除
不動産が絡む相続案件では、相続税の申告が必要になるケースが多いです。
相続税には基礎控除が定められており、相続税評価による遺産総額が基礎控除の範囲を超える場合、超えた部分に相続税が課税されます。
基礎控除の額は次のとおりです。
相続税の基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)
たとえば、遺産総額が5000万円で法定相続人が2人の場合、基礎控除額は4200万円になるので(3000万円+600万円×2人)、800万円の部分に相続税が課税されます。
(2) 10か月以内に遺産分割協議をしなくてもよい
相続税の申告においては、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例などで、相続税自体を減額したり、遺産の評価額を減少させる特例があります。
しかし、多くの特例は、相続税の申告期限(相続開始を知ったときから10か月以内)までに遺産分割協議などによって、遺産を取得する相続人が決まっている必要があります。
そのため、10か月以内に遺産分割協議が成立しないと損をしてしまうと考えて、拙速に遺産分割協議を進めてしまう方がいます。
しかし、このように慌てるのは得策ではありません。相続開始を知ってから10か月以内に遺産分割協議が成立しなくても、「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出し、法定相続分どおりに遺産相続したものとして、とりあえず未分割状態のまま相続税の申告をすることができます。
この場合、3年以内に遺産分割協議が成立すれば、それから4か月以内に税務署に更正の請求をすることで、特例の適用受けることができます。特例の適用が受けられると、過分に納税した税金が戻ってきます。
なお、申告期限後3年経過してもなお遺産分割協議がまとまらない場合でも、遺産分割調停などの法的手続を行っているときは、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、所轄税務署長の承認を受けることで、さらに特例が適用できる期間を伸ばすことができます。
7 譲渡所得税
(1) 譲渡所得税とは
相続した不動産を売却すると、譲渡所得税が課税されます。これは相続税とは別に課税されるものです。譲渡所得税は、不動産を譲渡したことによって生じた利益に課税されます。つまり、譲渡によって得た収入から、不動産の取得費(土地購入費など)と譲渡経費(不動産仲介手数料など)を控除した残額に譲渡所得に対して課税されます。
譲渡所得税は、もし被相続人が生きていて、被相続人が不動産を売却したとしても課税される税金です。したがって、相続により被相続人の地位を承継した相続人が不動産を売却した場合も、当然に課税されるのです。
たとえば、取得費と譲渡経費が1000万円の不動産を3000万円で売却する場合、差額の2000万円に譲渡所得税が課税されることになります(税率は2割程度)。
(2) 居住用不動産の特別控除
ところで、居住していた不動産を売却する場合3000万円の特別控除があります。そのため、遺産である不動産に居住している相続人が、被相続人から不動産を相続して、これを売却する場合、譲渡所得から3000万円を控除することができます。
たとえば、父と長男が同居していたところ、父が亡くなり、不動産を長男と次男が2分の1ずつ相続し、これを共同で3000万円で売却して代金を分けるとします(取得費と譲渡経費は1000万円とします)。この場合、居住している長男は居住用不動産の3000万円の特別控除が使えるので、譲渡所得税がかかりません。一方、次男は、譲渡所得にあたる1000万円((3000万円-1000万円)÷2)に譲渡所得税が課税されることになります。
しかし、長男が次男に代償金1500万円を支払って単独で不動産を取得し、長男がこれを3000万円で他に売却した場合、長男は居住不動産の特別控除の特例によって譲渡所得税の課税をされなくて済みます。そしてこの場合次男も、譲渡所得ではなく、遺産分割の代償金として1500万円を受け取るだけなので、譲渡所得税を負担しなくて済みます。
このように、遺産分割協議を進めるにあたっては税金についての知識があった方が、より有利な解決ができる場合があります。
8 当事務所のサービス
当事務所が扱う相続案件の多くは不動産が絡む案件です。また当事務所は不動産売買(共同売却を含む)の案件、借地・借家の案件、共有物分割の案件、不動産担保(抵当権、仮登記担保など)の設定・実行の案件、境界確定の案件、通行権に関する案件など、これまでに不動産に関する依頼を多数受けて解決してきました。したがって、相続と不動産が絡み合う案件は、当事務所が最も得意とするところです。
また、当事務所から頻繁に不動産の査定や売却を依頼している大手不動産会社がおり、当事務所と協力関係を築いています。争いがある難しい案件でも、協力関係にある不動産会社に査定や売却を依頼していただくことができます。
さらに当事務所は不動産に関する税務に詳しい税理士と協力関係にあるため、必要に応じてお客様に当事務所の紹介する税理士に税務申告を依頼していただき、当事務所と税理士が共同して案件の処理を行うことが可能です。
相続と不動産に強い弁護士をお捜しでしたら、ぜひ当事務所にご相談下さい。
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